契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
不可解な内見
「ちょっ…、孝也! ここどこ?」

 車を下りて辺りを見回した晴香は、戸惑いの声をあげた。
 孝也の車が滑りこんだのは、どこかの建物の地下駐車場のようだが、話に夢中になっていた晴香は残念ながら地下に入る前の景色を覚えていない。
 だから自分が今いる場所が、なんの建物の駐車場なのか…、皆目見当がつかなかった。
 そんな晴香をよそに、孝也はカツカツと靴を鳴らして歩いてゆく。その先には明るいライトに照らされたエレベーターホールがあった。
 孝也の背中を慌てて追いかけている晴香は、尋常じゃない高級感を漂わせる空間に息を呑む。そしてその壁に浮かび上がる文字に目を剥いた。

『タワーザレジデンスミライ』

 県内の不動産業に着く者なら誰でもが知っている、超高級タワーマンションだ。

「え!? なっ…、孝也、ここまさか…!」
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