契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 孝也の回答に、なんだか安心してしまい晴香は脱力する。

「なんだぁ~、そうだったんだね。あーびっくりした」

 孝也の家だというのなら、このマンションは納得だ。具体的な住所は聞いていなかったけれど、孝也が転職を機に市内の便利な場所へ引っ越したのは知っていた。ここは本社から近いし、彼の通勤にはもってこいだろう。
 賃貸なのか分譲なのかは不明だけど、腕のある不動産営業マンの給料は天井知らずなのだから、彼ならばローンでも家賃でも難なく払えるに違いない。

「ドキドキして損しちゃった」

 そう言って晴香は胸を撫で下ろす。
 晴香に紹介したいという部屋へ行く前に、何か用事があって自宅に寄ったのだろうと納得したからだ。
 そんな晴香を、孝也は奥へと促す。

「…まぁ、とにかく。中へどうぞ」

「お邪魔します」

 出されたスリッパをそうっと履いて、晴香は孝也の背中を追って、いくつかのドアが並ぶ廊下を進む。
 そして彼がリビングのドアを開けた途端、「わぁ」と感嘆の声をあげて目を見張った。
 リビング一面の大きな窓の先にキラキラと輝く夜景が浮かんでいる。
 右手にこの街のシンボルともいえるツインタワー、左手にはかつてこの街が城下町だったことを思わせるライトアップされたお城。
 これ以上ないくらいの景色だった。

「すごい! 綺麗…」

 思わず窓に歩み寄って、晴香は絶景を堪能する。
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