契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 リビングのソファに座って孝也を待つ間、晴香は今度は夜景ではなく部屋の中をキョロキョロと見回した。
 天井の高いリビングダイニングに対面式のキッチン。ここへ来るまでの廊下にはドアが四つ並んでいた。ひとつはトイレでもう一つはバスルームだとしたら2LDKだろうか?なんてことを考えていると、目の前にグラスに注がれた麦茶が置かれた。

「ごめん、こんなものしかなくて」

 孝也がコの字型になっているソファの反対側に座る。
 晴香は首を振ってグラスを取った。

「ううん。ありがとう、ちょうど喉が渇いてたんだ」

 そう言って一口飲むと、冷たい麦茶が火照った身体に染み渡るような気がした。

「普段は寝に帰るようなもんだから、冷蔵庫には何もなくて」

 孝也の言葉に晴香は頷いた。
 独身男性のひとり暮らしなんて、皆同じようなものだろう。
 結婚するまで実家にいた健太郎なんて、もっとひどかった。リビングに脱ぎっぱなしの服、キッチンには食べっぱなしの食器。
 何度注意したかしれない。
 それに比べてここは、少なくとも掃除は行き届いている。晴香がそれをそのまま口にすると、孝也は頭をかいた。

「週に二回、ハウスキーパーをお願いしてるんだ。それからランドリーサービスも。そうじゃなかったら、俺だって健太郎と変わらないよ」
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