契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 間取りは晴香が予想した通り、2LDKだった。さらにいえば角部屋で主寝室とバスルームからもリビングと同じように絶景を望めるという、ちょっと信じられない贅沢さだ。
 主寝室の隣にはもう一部屋個室があったが、こっちはあまり使っていないようで、がらんとしていた。
 お客さんを連れている時の営業マンのように案内をする孝也に、晴香はいちいちくすくすと笑いながら、全ての部屋を堪能した。
 『セントラルホーム』で新築マンションを扱うことはあまりない。
 それでもどこかに新しいマンションが建つという情報を入手するたびに、晴香は必ずパンフレットをもらってきて、一通り目を通すようにしていた。
 それはもちろん仕事のため…ではなく、ただ好きだからだ。
 パンフレットを眺めているだけでも、豪華な内装や、夢のような景色に心が躍る。特に気に入った物件のパンフレットはファイリングしているほどだ。けれど、実物は比べ物にならないほど素敵だった。
 そうして全ての部屋を見せてもらってから再びリビングに戻っても晴香の興奮は収まらなかった。

「こんなに素敵な部屋、寝に帰るだけなんてもったいないね!」

 孝也が、「まあね」と言って、自分のためのお茶をごくごくと飲んだ。

「でも、何より立地がめちゃくちゃいいからさ。本社だけじゃなくて、県内どこにでも行けるし。…港店にも地下鉄一本で行けるよ。始発駅だから朝でも座れるし」

「本当? いいなぁ。うちからだと乗り換えがある上にぎゅうぎゅうなんだよね」
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