契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 晴香は自分が借りる部屋もこのあたりだといいなぁ、なんていう都合のいいことを考えた。
 もちろん無理に決まってるけど。
 でもあることに気がついて、晴香は孝也に問いかけた。

「でも孝也、ここファミリー物件じゃないの?」

 このマンションが分譲されていたときも晴香はパンフレットをもらってきた。たしか間取りが多彩で、単身用の、もっとコンパクトな部屋もあったはずだ。
 孝也が頷いた。

「そうだよ。でも俺は新築で買ったわけじゃないからさ、間取りは選べなかったんだ」

 たしかにそうか…と、頷こうとして晴香は目を剥いた。

「え?! 買ったの!?」

 さっき漠然とローンでも払えるだろう…なんて考えたことはたしかだが、それにしても本当に本人の口から"買った"なんて言葉が出るとは思わなかった。
 孝也は晴香が驚いたことに少し驚いたようなそぶりを見せたが、すぐに何でもないことのように言葉を続けた。

「でも半分はローンだよ」

 え?
 半分しかローンじゃないの?
 晴香は改めて、同じ会社でも平社員と役員の差を見せつけられたような気分になった。
 でも考えてみればあたりまえのことなのだ。
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