契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「なるほどね、よくわかったよ」

 納得したように孝也が言った。
 その彼に、どうしてそんなことを聞くのかと晴香は口を開きかける。でもその時、ローテーブルに置いてあるデジタル時計が目に入って、声をあげた。

「いけない! もうこんな時間!」

 いつのまにか、午後十時をまわっている。ちょっと寄り道をしただけなのに、つい話し込んでしまっていた。
 いくらなんでも、これからどこかに行くなんて無理だろうと晴香は思う。
 明日は水曜日、社員である晴香は休みだけれど、いつも忙しい孝也の方はきっと予定があるだろうから。

「孝也、ごめん。私…長居しちゃったね。憧れのマンションだったからつい…。せっかく部屋を紹介してくれるって言ってたのに」

 孝也が、

「気にしないで」

と首を振った。

「俺も話してたんだから」

「でも今からじゃ、内見も難しそう。いくらなんでも帰らなきゃ。せっかく部屋を紹介してくれるって言ってたのに…」

 晴香は傍に置いた鞄を手に取り、立ち上がりかける。けれどまさにその時、孝也が意外なことを言った。

「内見は、もう済んだよ」

「…………え?」
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