契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「晴香、俺たち結婚しない?」

 孝也が発したその言葉の意味を理解できないままに、晴香は呟く。

「…………けっ…こん?」

 孝也がゆっくりと頷いた。

「結婚すれば、一緒に住んでも誰にもなにも言われない」

 それはもちろんそうだろう。夫婦なら一緒に住む方が自然なのだから。でもだからといって、なるほどそれは名案などとは到底思えなかった。
 晴香と孝也は恋人同士ですらないのだ。それなのに、ただルームシェアを周りに認めてもらうためだけに結婚までするなんて。
 晴香は視線を彷徨わせる。
 もしかしてこれは、ちょっと大掛かりなドッキリなのかもしれない。
 どこかに健太郎が隠れていて、二人で晴香をからかってる?
 孝也が、そんな晴香の考えを読んだように釘を刺した。

「晴香、俺冗談で言ってるわけじゃないよ」

「だって…!」

 晴香は声をあげて、ふるふると首を振った。

「一緒に住むためだけに、そこまではできないよ。そんな嘘をついてまで…」

 それを、孝也が優しく遮った。

「嘘じゃないよ、晴香。嘘をつくんじゃなくて、本当に結婚するんだよ」

「本当に…?」

 晴香はますます混乱する。
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