契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「晴香、あの話考えてくれた?」

 お昼休み、デスクで自宅から持ってきたお弁当を広げる晴香に、隣のデスクの梨乃から声がかかる。
 あの話がなんの話なのか…すぐに思いあたった晴香は、うーんと唸って首を傾げた。

「やっぱり遠慮しておこうかな。私、お酒苦手だし…」

 再来月予定している飲み会の件である。
 社内の若手が中心になって、県内に散らばる店舗の営業マンと交流を深め、業務に活かそうというわかったようなわからないような名目のついた飲み会なのだが、平たく言えば社内合コンである。
 晴香はそれに一緒に参加しようと梨乃に誘われていた。

「大丈夫よ! べつに飲まなくたっていいんだから! 普段は顔を合わせない他店舗の人との交流が目的なんだからね」

 熱心に誘ってくれる梨乃にありがたいと思いながらも晴香の心はあまり動かされなかった。
 もともとが真面目なタチで、そういった場は苦手なのだ。
 あまり親しくない人たちと気楽に言葉を交わすなどという行為は、晴香が最も苦手とするところだ。
 そんなことを考えて黙り込んだ晴香を見て、梨乃ははぁとため息をついた。

「晴香…このままでいいの? 晴香があぁいう場所が好きじゃないのは知ってるけど、このままじゃ二十代終わっちゃうよ。もうあれから三年経つんだから、なんでもいいから自分から変えていかなきゃ…」

「それは…そうだけど」

「…結婚はしたいと思ってるんでしょ?」
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