契約夫婦の蜜夜事情～エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない～

　孝也の言葉に晴香は目を見開いた。
　驚くべきことに、まったくその通りだった。
　孝也が信頼できる人物なのは、晴香だけではなく晴香の家族も知っている。その家族とは、結婚していない今だって仲がいい。
　そして彼はちゃんとしすぎるくらい働いていて…。
　本当にぴたりとあてはまる。
　でも…。
　晴香は言葉を失ったまま、ジッと孝也を見つめる。
　でも孝也は…。
　＂弟なのに＂と言いかけて、晴香は口を噤んだ。
　そしてあたりまえすぎるもうひとつの事実に今さらながら気がついた。
　そうだ、孝也は弟ではないんだ。
　ずっと一緒にいすぎて、家族のように思っていたけれど、本当は血の繋がりのない赤の他人。
　結婚することだってできる大人の男性だ。
　そのことを今はっきりと認識して、晴香は雷に打たれたみたいに身体を震わせる。そして反射的に孝也の手の下にある右手を引っ込めようとした。

「っ…！」

　けれど、大きな孝也の手にギュッと握られてしまい叶わない。

「晴香、怖がらないで」

　孝也が、晴香を安心させるように優しく言った。