契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「晴香、結婚ってさ、すごく重要な契約だと思わない? やり直しが効かないとまでは言わないけど、いろいろな人を巻き込むよね」

 晴香はこくんと頷いた。やり直すとすれば、ただの恋人ではないのだから、少なくとも家族には心配をかけるはずだ。

「だからさ。俺だって晴香と同じ、信頼できる相手と結婚したいんだ。晴香のことは健太郎と同じくらいわかっているつもりだ。家族思いで、優しくて、それから真面目で…」

「真面目…」

 晴香は呟いて孝也を見つめる。孝也が頷いて、晴香をジッと見つめ返す。

「晴香は恋がしたい? それとも結婚がしたい?」

 正直言って恋愛は、もうこりごりだ。三年前に真剣に愛した男性は、晴香のことを愛してると言いながら、あっさりと裏切り去っていった。
 もしまた愛する人ができたとしても裏切られるかもしれないという恐怖が晴香の中に存在する。
 それなのに結婚はしたいという矛盾を晴香はここのところずっと抱えていた。

「恋愛なしで、結婚できるの…?」

 孝也にというよりは自分自身に問いかけるように晴香は呟く。

「俺と晴香ならできると思わない?」

「孝也は? 孝也はそれでもいいの? もう恋愛はしないの?」

 晴香の言葉に、孝也は視線を落として、

「俺は、それでもいいんだ」

と言った。
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