契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「それに、荷物を運ぶ手伝いをしようと思ってさ。俺のマンションには家具も家電も全部揃ってるから引っ越しというほど大げさなことはしなくてもいいと思うけど」

 孝也はそんなことを言って晴香の部屋を見回す。その彼を見上げて晴香はまたもや声をあげた。

「え? ひ、引っ越し!?」

「うん、そう。昨日、もうほとんどいらないものは捨てたって言ってたよね。ということはここにある物は大体全部ってことか…。…晴香、この羊のぬいぐるみももっていくの?」

 晴香が小さい頃から大切にしている羊のぬいぐるみを手に取って少し呆れたように孝也は言う。
 晴香は慌ててベッドを出た。
 そしてどこか楽しげに晴香の部屋を見てまわる孝也の腕を取った。

「ちょっと孝也本気なの!? 本気で一緒に住むつもり?」

「もちろんだよ」

 孝也はあたりまえじゃないかというように頷いた。

「今日明日のうちに荷物を運んでしまえば、晴香、週明けからは快適通勤生活が始まるよ」

「でででも、そんな急に…!」

「晴香、よく聞いて」

 孝也は晴香の両肩をがしっと掴んだ。

「賃貸でも売買でも本当にいい物件は滅多に出ないし出てもすぐに取られてしまうんだよ。ビビビときたら即決しなきゃ。善は急げって言うだろう?」
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