契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 真剣な顔で孝也は言う。
 そのいかにも本気な視線に晴香は思わず目を丸くして、次の瞬間吹き出した。

「ふ、ふふふ、それってマンションのこと? それとも孝也自身?」

 さすがは不動産営業のプロ、なんてことを思いながら、晴香がくすくすと笑っていると、孝也が目を細めた。

「どっちもだよ。マンションも俺も、すっごい掘り出し物」

「ふふふ、早くしないと取られちゃう?」

 笑いながら言うと孝也が肩をすくめた。

「まぁ、それは言葉のあやだけど」

 そしてジッと晴香を見た。

「昨日も言った通り、俺は晴香だから提案したんだ。他の人は初めから考えていない」

 それはもちろんそうだろう。こんな結婚、普通だったらありえない馬鹿にしてるのかと言われてもおかしくなはない。それこそ"姉"である晴香だからこそ言えたのだろう。
 喜んでいいのかどうなのか複雑な気分で晴香は頷く。孝也が本棚に手をついて、晴香を覗き込んだ。

「晴香、昨日はびっくりして考えがまとまらなかったと思うんだ。一晩寝たら心配なことが出てきたんじゃない? そういうの全部言って。一緒に解決していこう」

「一緒に?」

 晴香は首を傾げた。

「そう一緒に、夫婦ってそういうもんだろう?」
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