契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 言い終えて晴香は小さく息を吐く。
 長女としてしっかりしなくてはと思って生きてきた分、人に甘えるのは少し苦手だ。
 孝也が、

「おじさんおばさんっていうのは俺の両親のこと?」

と確認してから、晴香をベッドに座るように促した。
 そして自分も隣に座って、そっと晴香の右手に自らの手を重ねた。

「まず会社の方だけど、『セントラルホーム』は社内結婚が多いんじゃないの? 田所店長も言ってたじゃない、社長の奥さんも元社員だって聞いたよ?」

「それは…そうだけど。でも私みたいな地味な社員が、今をときめく副社長とくっついたらきっとみんなびっくりしちゃう」

 うつむいて晴香は言う。
 その言葉に、孝也がぷっと吹き出した。

「今をときめく?! なんだよそれ!」

 そしてそのまま、はははと笑う。

「前の会社でも時々社内結婚ってあったけど、結構意外な組み合わせもあったよ。たしかにびっくりするけど、それだけだって」

「そうだけど…」

 晴香は頬を膨らませる。
 男性側と女性側の反応はまた違うのではないだろうか。でもそれこまでは口にできず、晴香は口を噤んでうつむいた。

「まぁ、でも」

 孝也が、優しい眼差しで晴香を見つめた。

「不安になるのはわかるから、発表のタイミングと、結婚後の配置になんかに関しては慎重に晴香と相談しながらやるよ。大丈夫、心配しないで」

 孝也の言葉は、意外なほど安心できるものだった。
 晴香はホッと息を吐いた。
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