契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
「それから俺の家族のことだけど、まず間違いなく喜ぶよ。大丈夫、保証する」

 彼の両親がいい人たちなのは晴香だって知っている。晴香は頷いて、黙り込んだ。
 本当のことを言うともうひとつ晴香には不安があって、実はそっちの方が問題なんじゃないかと思う。唇を噛んで考え込む晴香を孝也が覗き込んだ。

「晴香? まだあるんじゃない?」

 それでも晴香は答えられない。
 どんな風に言葉にすればいいかさっぱりわからないからだ。
 晴香が不安に思うこと。
 それはつまり昨日までは本当に弟のような存在だった孝也を夫として見られるようになるのだろうかということだった。
 晴香は一言一言、選びながら言葉をつないでゆく。

「た、孝也のことは信用してる。恋愛感情がなくても夫婦にはなれるっていうのもなんとなくできるかもしれないって思ってる。でもそれなら尚更、これからどんな風に孝也と接していけばいいかがわからないの」

 孝也がニッコリ笑って晴香を安心させるように頷いた。

「そう気負うことはないよ。今まで通りいてくれたらいいんだ。もともと家族みたいなものだったんだから、そのままで」

「今まで通り…?」

「そう、今まで通り」
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