契約夫婦の蜜夜事情~エリート社長はかりそめ妻を独占したくて堪らない~
 晴香が朝食を食べ終えるのを待って、孝也は健太郎夫婦も呼び出した上で、母に結婚の話を報告した。
 母は涙を流して喜んだ。

「孝也君なら安心だわ。晴香をよろしくお願いします」

 その涙に晴香の胸は締めつけられた。
 うるさい親戚とは違い、母は晴香に早く結婚しろなどとは言わなかった。それでもやっぱり心の中で心配してくれていたのだろう。
 弟夫婦も同じように喜んでくれた。

「姉ちゃんみたいな、間取りオタクは孝也くらいしか無理だもんな」

 そんな憎まれ口を叩く健太郎の隣で、自らも孝也と高校の同級生だった美紀はニカっと笑った。

「これで久我君をめぐる争いがやっと終了するんですね。無駄な同窓会もなくなるでしょう」

「え? 争い?」

 なんのことかと目を丸くする晴香に、美紀は平然として話を続ける。

「高校時代から無敵だった久我君が、地元の優良企業の副社長にまでなったんですから、独身の女子の間では熾烈な争いが繰り広げられていたんですよ。ここ最近やたらと頻繁にあった同窓会はそのために開かれてたといってもおかしくないくらいなんです。特に元カノの…」

「中島」

 放っておいたらいつまでも話し続けそうな美紀の言葉を、孝也が旧姓で呼び遮った。

「大げさだよ」
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