ふたつの羽根
そこには両手をズボンに突っ込んだ陸が立っていた。
いつもなら声で分かるのにボーっとしすぎなのか、陸の声すら分からなかった。
「えっ、ど…どうしたの?」
突然現れた陸に驚き、あたしの声は戸惑っていた。
「それは俺の台詞。ってか何してんの?」
陸はビルの壁に背をつけ交差点を見渡す。
その横を向いた顔があまりにも透き通るぐらい綺麗に見えて思わず、あたしは陸から目を逸らす。
「人間…観察…」
陸はうっすら笑い「へー楽しい?」とあたしに目を向ける。
「んー…どうだろ」
これが本当のあたしの答えなんだと思う。
楽しいわけでもないし楽しくもない。
いつもあたしの答えは微妙な真ん中で止まっている。