ふたつの羽根
「ちょっと来てほしい所があんだけど」
「いいけど何処行くの?」
「秘密」
壁から背をスッと離し足を進める陸を見て、あたしは慌てて立ち上がる。
鞄を抱えたまま小走りで陸の背中を追い掛けた。
あの日…
胸をかりて眠った日から余計に意識しすぎて思うように陸の顔が見れない。
近くにいるだけで、あたしのドキドキ感は納まらない。
だけど陸は何もなかったかのように平然な顔をして、いつもあたしの前に現れる。
その微笑んだ顔がグッと胸に突き刺さり熱が増す。
「ねぇ…何であたしがここに居るってわかったの?」
前を歩く陸の背中に声をぶつける。
陸は歩くペースを落として、あたしの隣に並ぶ。