ふたつの羽根

今までずっと前を向いていた陸は、あたしの小さな呟きで初めて振り向く。


「影?」


その陸の目線を重視せず、あたしはただ光だけを見つめる。 


「うん。あたしの中にはきっと光なんてないんだ…。夜中の家に帰って電気も点けないみたいに真っ暗」



光なんてないんだ…

優しさなんて、もらっていなければアイツみたいな男に適当にされ、あたしの中は真っ暗。 

だから光を入れる隙間さえなければ入ってくる光もない。 



「それは違うと思うけど」 

「えっ?」

「なんつーか、光と影は同じと思う。太陽がでてねーと影はつくれねぇじゃん。だから里奈が影ばっかりって思ってんだったら、その分、光も同じぐらいあると思うけど」 


< 110 / 275 >

この作品をシェア

pagetop