ふたつの羽根
今までずっと前を向いていた陸は、あたしの小さな呟きで初めて振り向く。
「影?」
その陸の目線を重視せず、あたしはただ光だけを見つめる。
「うん。あたしの中にはきっと光なんてないんだ…。夜中の家に帰って電気も点けないみたいに真っ暗」
光なんてないんだ…
優しさなんて、もらっていなければアイツみたいな男に適当にされ、あたしの中は真っ暗。
だから光を入れる隙間さえなければ入ってくる光もない。
「それは違うと思うけど」
「えっ?」
「なんつーか、光と影は同じと思う。太陽がでてねーと影はつくれねぇじゃん。だから里奈が影ばっかりって思ってんだったら、その分、光も同じぐらいあると思うけど」