ふたつの羽根

両腕で目をギュッと押さえても止まるわけもなく、それ以上にあたしの小さな泣き声が漏れる。


「りーな」


不意に呼ばれた名前。

呼ばないでよ!


「里奈?」

「呼ばないでよ」


擦れた声が小さく響く。


「何で?また泣いてんの?」 

「だれが泣かせてんだよ。これ以上優しくしないでよ」 

「いーや!」


陸はうっすら笑い、あたしの腕を軽く引っ張る。

右腕がツルンと手すりから滑り落ち涙の顔を見せないように必死で反対側の手で押さえる。 


辺りが真っ暗で良かった。

泣き顔なんて見られたくない。 


陸はさっきよりも強くあたしの腕を引っ張り、その拍子にペタッと陸の体とあたしの体がくっついた。


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