ふたつの羽根
拓真先輩はそれ以上、口を開かずただ横に目を向けているだけだった。
その方向を辿るように恐る恐る視線を逸らすと両手をポケットに突っ込んだ陸が地面を見つめながら何度も何度もため息をついていた。
その隣にはド派手な女の人。
黒のワンピースに赤色の薔薇が埋めつくされ、それをマッチするかのような白いジャケット。
濃い化粧に真っ赤な唇。明るめの長い髪がクルクルと巻かれていて、首元から見えるのは、どう見ても真珠だろう。
…何、この人。
静まり返るこの4人の空間の中、話を切り出したのは拓真先輩だった。
「何で彩乃が居んの?」
彩乃さんはフッと息を吐き「拓真もそれ聞くんだ」と笑みを漏らし真っ赤な唇を動かす。