ふたつの羽根
「あー…陸なら来てな…」
急に話は途切れ、拓真先輩の目線はあたしじゃなくて、あたしの後ろに向いた。
その顔は見るからにして驚いている表情だった。
そして拓真先輩は「めずらしっ…」と声を漏らす。
珍しい?
呟かれた声に首を傾げ、後ろを振り向いた瞬間、あたしの鼓動は早く打ち付ける。
「何が珍しいって?」
眉を寄せながら低い声をだした男は、今まさに会いたかった人物だ。
「…陸」
陸との重なり合った瞳に熱が増す。
そして陸は口元の端を上げて軽く微笑んだ。
まるで“久しぶり”って言っているみたいだった。
高鳴る鼓動のあたしとは逆に、陸は平然として話を続ける。