ふたつの羽根
「えっ、あっ…」
戸惑うあたしに彼は手招きをする。
うっすら笑う顔は誰が見ても端正な顔つきだ。
そんな彼の姿をジッと見ていると、あたしの足は勝手に進んでいた。
両手をポケットに突っ込んで歩いて行く彼の後ろ姿を見て歩いて行く。
時たま落ちている石ころをポンっと蹴りながら歩く彼にあたしは笑みを漏らす。
「あっ、そうそう…」
突然、思い出したかの様に口を開く彼にあたしは目線をあげる。
「俺、陸。呼び捨てでいいから…」
「いやっ…でも」
年上って思った限り呼び捨ては…
「マジで呼び捨てでいーから」
押すように言ってくる陸に「あっ…はい」と頷く。
川原沿いを抜けて右は、あたしが住んでいる住宅街が目に入る。