ふたつの羽根
その住宅街を横目で見ながら通り過ぎると大通りが目に入った。
少し歩くといつもあたしが座る古びた階段に目がいく…
ずっと見ていると「何かある?」と陸は訪ねる。
あたしは首を振り陸の後を小走りで着いて行く。
大通りの交差点を渡って左右に店が並ぶ中しばらく歩くと陸は一軒の店を指差す。
「ここ」
そう言って陸はドアノブに手を掛け、ギーっと言う音がして鐘の音が鳴り響く。
中に入ると昔ながらの喫茶店で、よく言うとバーに近い感じだ。
お客さんも何人か居る中、テーブルをすり抜けるようにして奥へ進み窓際の空いている席に陸は腰を下ろし前の席を指差す。
あたしは軽く頷き椅子に腰を下ろした。