ふたつの羽根
「どうぞどうぞ座って下さい」
手をベンチに向けて合図する一人の男にあたしは「いいですいいです大丈夫ですから」と声を掛ける。
そんなあたしの言葉に田上が飲んでいたコーヒーをブッと吹き出し声に出して笑い始める。
その口から出たコーヒーが前のフェンスに背をつけて座っている拓真先輩にめがけて飛び散った。
「おっ…お前きたねーだろ!」
拓真先輩は叫びながら背を付けたまま少しよこにずれる。
「わりーわりー。ってか里奈里奈!こいつ1年の圭介」
田上はフェンスに移動した男を見て言う。
あたしはその人に目を向けて思わず目を見開いた。