ふたつの羽根
「何かあった?」
陸の優しい声で潤んでいた目から一粒の雫が頬をつたって流れ落ちる。
目を手で隠すように押さえあたしは首を振る。
今頃、何で涙なんか出るのよ…
一番、流したくない時に…
「じゃあ美味いもんでも飲みに行こ」
陸は立ち止まるあたしの背を押し足を進める。
きっと陸は、あたしの涙に気付いていた。
何も言ってこなかったけど、あたしにはそれが嬉しかった。
川原沿いまで来ると「あのさ…」と陸の背中に投げ掛ける。
「ん?」
クルっと振り返り両手をポケットに突っ込んだまま後ろ向けに陸は歩く。