ふたつの羽根

静まり返る教室の中、いっせいに皆の視線があたし達に集中する。


げっ!


田上はフッと笑い「うるせーのは里奈だろ」とあたしに目を向ける。


だって、田上が…


「おい美藤。集中しろよ」 


先生は呆れ交じりに声を出し、教科書を片手に深緑の黒板にコツコツと真っ白いチョークで文字を埋めていく。 


そして再度、後ろを見て「田上もだぞ」と付け加えた。 


「あ?俺っすか?どう考えても里奈だろ」 

「なんであたしなの?」

「だって里奈じゃん」


笑いながら言う田上の声に「両方だ」と先生の声は飛ぶ。 


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