ふたつの羽根

「…別に」


思ってもいない返事を返すと「里奈の嘘つきー」と笑みを漏らしながら、あたしの目の前に顔を覗かせる。

嘘を的中され、あたしは有亜から視線を外す。

パックのカフェオレを手にするあたしに「ねぇ上見て」と有亜は高くに指差す。


その指を辿っていくと3階を飛び越えて、その上の屋上だった。


「あっ…」


フェンスに寄りかかり大きく手を振っているのは拓真先輩。 

あたしと有亜はお互いの顔を見てハハッと笑う。


「拓真先輩って面白いね」


有亜はそう言って両手を広げて大きく手を振る。


あたしも紙パックを片手に屋上に向かって手を振った。 


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