お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
 俺はそっと彼女に歩み寄り、もう一度至近距離で「似合ってる」と伝えた。
 すると、彼女は視線を左右にさまよわせてから、恥ずかしそうにぺこっと頭を下げる。
「あ、ありがとうございます、お騒がせしました」
「もっと顔をよく見せて」
「た、高臣さ……」
「兄さん」
 顎を強引に持ち上げたところで、咲菜にバシッと背中をハンドバッグで叩かれた。
 お蔭で正気に戻れた俺は、名残惜しくも凛子から離れる。
「私と岸田さんがせっかく綺麗にしたのに、少しでも触って乱したら許しませんよ。あと、運転手待たせてますから。もう行きましょう。岸田さん、ありがとうございます」
「高臣ぼっちゃん、凛子ちゃん、またいつでも呼んでくださいねー」
 岸田さんはひらひらと手を振って、大きいメイクボックスを担いでマンションを出て行った。
 まだいつまでも凛子の姿を独り占めしていたかったが、咲菜に急かされているため、部屋を出る準備を進める。
 彼女は戸惑ったような顔で俺を見つめていたが、すぐにパッと目を逸らし、荷物をまとめに自分の部屋へと向かった。
 
 〇
 
 会場は飯田橋にあるホテルだ。
 毎年父が開催しているパーティーで、うちの親族はもちろん、おもにうちと取引のある役職者と経営者を一気に集めて、関係値構築のために開催されている。
 毎回このパーティーの日は憂鬱でしかないが、今日は美しい凛子が隣にいる。
 クソみたいな親族から守るために、一日ずっとそばにいよう。
 親族ならまだしも、他の男にナンパをされてしまうかもしれない。
 そんなことを考えているうちに、車が会場へ着いた。
 受付を咲菜に任せ、三人で広いホールの中へ入ると、丸テーブルを囲うようにすでに多くの人が集まっている。
「き、緊張します……。しかも天井いっぱいにシャンデリアが……眩しい……」
「大丈夫。凛子はただ隣にいてくれたらそれでいい」
「凛子ちゃん、お酒何飲みます? 高臣兄さんはシャンパンでいいですよね」
 咲菜がウェイターの近くに凛子を呼び、凛子は色とりどりのお酒の中から好きなものを選んでいる。
 どうやら咲菜は凛子のことを気に入ったようだ。
 昔から、興味ない奴は視界に入れないほどハッキリした性格の人間だから。
 今日は咲菜がいてくれてよかったと思い、ふたりの様子を少し遠くで見ていると、トンと肩を誰かに叩かれた。
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