お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~
「高臣くんじゃないか。久々だね」
「神宮司(ジングウジ)さん、ご無沙汰しております」
 振り向くと、そこにはずいぶんと昔からお世話になっている、老舗の大手家具屋の社長がいた。
 灰色の髪の毛をオールバックにして、ビシッとスーツを着こなしている姿は、とても六十代という年を感じさせないほど若々しい。
 神宮司さんには、二十代のころとくに仕事のノウハウをたくさん教えてもらい、とてもお世話になった。
「あ、神宮司さん。ご無沙汰しております。お元気でしたか」
 今度はお酒を持って戻ってきた咲菜が、笑顔で挨拶をする。
 咲菜にそっと渡されたグラスを持って、神宮司さんと乾杯をした。
 すると、うしろにいた凛子に気づいたのか、神宮司さんが「その方は」と問いかける。
「僕の婚約者の高梨凛子です。じつは神宮司さんもお好きな、高梨園の長女なんです」
「そうなのか。いや、知らなかった。ご婚約おめでとう。僕も高梨園のファンなんだ」
 そう言って、神宮司さんはにこっと凛子に笑いかける。凛子はすっかり緊張しきっていたので、大丈夫かと心配になり、ちらっと彼女の顔をのぞいてみる。
 しかし、そんな心配は一切無用なほど、凛子はその名の通り凛とした表情で会釈をした。
「はじめまして、お会いできて嬉しいです、神宮司忠信(タダノブ)さん。高梨凛子と申します。……じつはうちのお店でも、JINGU(ジング)の家具を使わせて頂いているんです」
「おお、そうなのか! それは知らなかったよ、嬉しいね」
「はい。JINGUさんの家具は本当に作りがしっかりしていて、うちのお店を長年支えてくださっています」
 ――驚いたのは、神宮司さんのフルネームや会社名を知っていることだけじゃなく、その話し方や立ち振る舞いだった。
 一度も俺の口から神宮寺さんの話をしたことはないし、凛子が昨夜勉強した以外に考えられない。たしかに事前に参加者の名簿は渡していたが……、参加者は三百名近くいたはずだ。
 凛子は、俺に見せないしっかりとした口調と表情で、神宮司さんと談笑している。
 横にいる咲菜も、驚いた顔で凛子のことを見ている。
「高臣兄さん、あの子うちにもらえるんですよね?」
「凛子をモノみたいに言うな」
「やったー、ようやく私にも妹できましたね」
 棒読みだけれど、本当に嬉しそうに、咲菜は舞い上がっていた。
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