お見合い政略結婚~極上旦那様は昂る独占欲を抑えられない~

突然の告白

▼突然の告白 
  
 『凛子……、君が欲しい。本気で』
 高臣さんの言葉の真意が、分からない……。
 私は、出席したパーティーで言われたことを引きずりながら、もんもんとした日々を過ごしていた。
 今は、仕事が終わり、職場のロッカーでぼうっとした頭のまま私服に着替えている。
 私情ははさむなと念押しされたけれど、あんなことを言われたらいくらなんでも動揺してしまう。
「はあ……」
 そして、高臣さんと一緒に住んでから三か月が経ったけれど、あの日から高臣さんの顔を直視することができないままでいる。
 顔を見ると、なぜか心臓がドキッと跳ねて、変に意識してしまうから。
 ため息をつきながら着替えを済ませると、岡田さんが心配そうな表情で私の顔を覗き込んできた。
「おつかれ高梨ちゃん、大丈夫? なんだか顔色悪いけど」
「あはは、最近なんだか寝不足で……」
「悩んでるのは仕事関係? 恋愛関係?」
「えっ!」
 思わず動揺して声を上げてしまった。こんなの恋愛系の悩みだとバレバレじゃないか。
 慌てて口を押えたが、岡田さんは「そうか」と納得したように腕組みをしてから、私の肩をポンとたたく。
「高梨ちゃんからそういう話聞いたことなかったけど……彼氏できたの?」
 彼氏ではなく、政略結婚前提の婚約者……だなんて今ここで言えるわけがない。
 高臣さんが普通の彼氏だったら、どんなに相談しやすいことか。
 でもここで話したくないなんて言ったら、きっと岡田さんは傷つくだろう……。どうしよう。
 なんと答えたらいいのか考えあぐねていると、岡田さんはその間一層真剣な表情になって、私の名前を読んだ。
「高梨ちゃん。彼氏できたり結婚したりしても、私の推しへの情熱、たまに聞いてよね。高梨ちゃんしか聞いてくれる人いないんだもん……」
「え」
「どこかに発散しないと、私爆発しちゃうから!」
 予想の斜め上の発言に、私は思わずずっこけてしまった。
 いつも自分の趣味に命を懸けている岡田さんは、日々楽しそうでまぶしい。
 彼女と一緒にいると、やはり良い意味で頭の中がリセットされる。
 うん、くよくよ悩んでいても仕方ない! 
 本当に高臣さんの気持ちが知りたくなったら、本人に聞くしか方法はないんだし。
 私は頭の中のもやもやを振り切って、岡田さんの好きなアイドルの話を少し聞いてから、更衣室を出たのだった。
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