俺様社長と溺愛婚前同居!?

「籍を入れていないのなら、僕にもまだチャンスがあるってことですよね?」

 怖いくらいの、まっすぐな視線に怯える。
 愛情で溢れている優しい眼差しとは言い難い。鋭く射貫くような強い瞳だ。
 何て答えればいいか分からずにいると、急に運転席の扉が開いた。

「おい、櫻井。俺の妻に何をしている?」

「…………社長」

 チッと舌打ちするのが聞こえて、櫻井さんは私から体を離した。
 そして運転席から降りると、ふたりは一歩も譲らない姿勢でにらみ合っている。

「何をやっているんだ? どういうつもりだ」

「社長、僕が結花さんを好きだったことは知っていたはずでしょう? まだチャンスがあるのではないかと彼女を口説いていました」

 今から殴り合いでも始まりそうなただならぬ気配を感じて、私も急いで車から降りてふたりのもとへ駆け寄る。

「ごめんなさい、私が車に乗せてもらったから、こんなことになって……」

「結花さんは悪くありません。これは男同士の話ですから」

 櫻井さんは私をフォローしたあと、もう一度賢人さんをじっと見据えた。

「結花さんの気持ちを無視して、社長が結花さんとの結婚を押し切っているように思えまして。そのことを聞いていたのです」

「それは……」

 核心を突かれて、賢人さんは言葉を失っているようだった。

 櫻井さんが言うとおり、私たちはお互いのメリットのために結婚を決めた。上辺だけの夫婦になる予定だけど……でも。
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