俺様社長と溺愛婚前同居!?
最近現れた高梨結花は、シンクフロンティアの男たちの調子を狂わせている。
そんな女性だから、必要以上に関わらないようにしているというのに、俺のことを気にかけてくる。
お節介に感じる一方で、邪険に扱えない自分もいて。
今日だって、俺のためにと弁当を用意してくる。
「社長は素直じゃないですよ。いつも結花さんのお料理を召しあがっているのに、食べていないようなふりをされて……」
「いつ食べようが、俺の自由だろう」
「まあ、そうなのですが」
ランチタイムに食べなかった食材は、午後の空いた時間に食べている。人が作ったものを捨てるのは性分に合わない。ただそれだけのこと。
だから、今日の弁当も、捨てられずに食べる。
廣田が退席したあと、パソコンのメールチェックを始める。ふと応接用のテーブルに移動させていた弁当が視界に入り、タイピングが止まる。
――好きな食べ物を教えてください。鴻上さんが食べたくなるような料理を作ってきます。
先日、怪我をしてしまった彼女を病院に連れて行った帰りに、そんなことを言われたことを思い出す。
笑顔を向けられ、言葉を失った。
この子は、悪い男を知らないのだろうか。男にそんなきらきらとした笑顔を振り向けると、期待させることを知らないのだろうかと呆れてしまった。
いいように言えば、純真無垢。
悪く言えば、世間知らずの無知。