俺様社長と溺愛婚前同居!?

「急に押しかけて申し訳ない。これを返しにきただけだ」

「わざわざこれを持ってきてくださったんですか、すみません」

「君の会社に持っていったら、直接渡してくれと頼まれた」


 ああ、もう少し言い方ってものがあるだろう。

 こちらが賃金を払っているとはいえ、わざわざ俺のために別のものを用意してくれたんだ。手を煩わせているのだから、感謝のひとことくらい言うべきなのに、失礼な態度しか出てこない。


「そうだったんですね、申し訳ございません」

「これは君の私物か?」

「え……いや、これは、鴻上さん専用のお弁当箱です」

「え?」


 俺のために買ったのか? これを?

 高梨結花の言葉を聞いて、思考が停止する。


「いつも忙しそうで、社員さんたちと一緒に食事をされないので、お弁当だったら食べやすいかなと思って用意したんです」

「…………」


 一瞬変なことを考えそうになったが、この子は気配りのできる子なのだろう。

 自分に与えられた環境の中で、最大限にいいものができるように、あれこれ考えてやったことのひとつに違いない。

 しかしそこまでしてもらう義理はない。

 他の社員たちと同じように、ランチタイムに昼食を用意してもらうのでいい。


「そんなに気にしてもらわなくて結構だが」

「いえいえっ。私には、皆さんのお昼ご飯の準備を任されています。最善を尽くすのが私の務めです。なので、少しでも食べてもらえたら嬉しいです」
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