【完】爽斗くんのいじわるなところ。

そっちを向いてしまったら、これ以上ドキドキさせられる。


また意識をうしなうんじゃないかって、不安になってしまうような心音があたしの真ん中で鳴っていて……。


いつまでも顔を背けていたままのあたしに彼は問う。



「……向かないっていうのが、答え?」



頬に落ちるキスと、どこか寂しそうな声。


「違……!」


「嫌だからこっち向かないってことでしょ。だってお前は・」


「違うってば……! だって、そっち向いたら。たぶんあたし、心臓壊れちゃうから……!」


勢いにまかせて言い切ったら、彼は黙り込んでしまった。



だからあたしは目の下ぜんぶ手で覆い隠しながら、彼の様子を窺ってみた。


すると。


動揺したみたいに目を動かして、逆光でもはっきりわかるくらい頬を赤らめた彼がいて……声がでなくなった。


代わりに、心臓がバクバクとなる。



「遅いんだよ。……、今さらこっち向くな」



すっと伸びてきた手のひらで、目隠しされたあたしは、「はい……」と頷くのみ。


……そんな顔、見せないでよ。


きゅうんと、胸が痛いよ。

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