極上社長からの甘い溺愛は中毒性がありました
けれど、パンパンッと両手で両頬を軽く叩き、畔は自分の気持ちを無理矢理変えた。
(名前が違うのなら、また練習すればいい。彼に会って話をしなければ)
まだ別れの言葉の言われたわけではない。
ちゃんと会って話をしないと、お互いの気持ちを知らなければ。
畔はすぐに浴槽から飛び出て、着てきた服を身につけて幼馴染みの元へと向かって。
「なんだ……早かったな」
『起きてたんだ………』
怒られるのを覚悟で叶汰を叩き起こそうとしていたが、すでに彼は起きており朝食の準備をしていた。予想外の事にきょとんとしていると、叶汰はリビングのテーブルに視線を落とし「座れ」と口の動きで畔に伝えてきた。
叶汰はいつも料理をしているようで、手際よくホットサンドと野菜スープを作り、畔の前に置いた。夕飯を食べていない畔のお腹から音が鳴りそうだった。
『おいしそう』
『ありがたく食べろ』
『はーい!』
温かなスープを口に入れる。
すると、不思議と安心出来る。畔が『おいしー』と言えば、目の前に座り、ホットサンドを噛る叶汰が「当たり前だろ」と笑う。
何だか学生の頃に戻ったような感覚に襲われ、畔は自然と笑みがこぼれる。幼馴染みというのは、やはり特別な関係だなと思う。
耳が聞こえなくなった時も、畔がデビューした時も。そして、こうやって畔が苦しむ時もさりげなく助けてくれるのだ。何度感謝しても足りないぐらいだろう。
畔はあっという間にホットサンドとスープを完食した。すると、それを待っていた叶汰がすぐに手をあげた。