トライアングル・ビーチ
「大丈夫大丈夫、誰にも言わないから。佐治くんにも誰にも」
ひととおり笑ったまゆきは、わたしの剥き出しの肩をばしばし叩いて言った。笑いすぎて、目尻に涙が溜まっている。
「……」
ワンテンポ遅れて、言葉の意味が降ってくる。そうか、やっぱり彼女も気づいていたんだ。
「橘さんは……告白とかするの? 今日」
声が震えた。
「そのつもりなんだけど、市井さんは?」
口角をきゅっと上げて、まゆきは問い返す。
ああ。ライバルのお下がりを着て、告白なんてできるわけない。
羞恥と絶望で目の前が真っ暗だ。

返事を留保してみんなの方に視線を戻したとき、思考が停止した。
佐治くんが、誰かに向かって頭を下げている。みんなが円になって取り巻き、ヒューッと(はや)す声も聞こえる。
「……さいっ!」
佐治くんは何かを叫びながら、片手を差しだしている。
その先にいるのは、ビーチボールを抱えた由良だった。
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