【コミカライズ】漆鷲社長の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―



小雨になったころ、私はレインボーヒルズタウン駅の近くまでやってきていた。

夜十一時過ぎ。

高級ブティックの連なるこの通りはさほど人通りはなく、オシャレな街灯と、ちらほらある深夜営業の店舗に明かりがついている。

熱気と湿気で使い物にならなくなった眼鏡を折りたたんでポケットに押しこみ


「帰るか⋯⋯」


消え入りそうな声で決意した。


その瞬間―――


後ろから勢いよく腕を掴まれて

振り返ると、私の腕を掴んだまま膝に手を付いて、大きく肩を上下させる長身。

睨みつけるように、私を強く見上げていた。

私のほうは、時間が止まったかのように動けず、ただ、ただ、街灯のオレンジ色のライトに照らされる色素の薄い顔立ちに見惚れ、また激しく動揺していた。

永斗さんだった。


「⋯⋯っはぁ、はぁ⋯⋯よかった⋯⋯」


乱れる息を時間をかけて静めたあと、彼は言う。

いつもふわふわの金色の髪は、雨にのせいでぺったんこで。

鮮やかだったシャツは、しっとり濡れて濃紺になっていて。

白くて滑らかな肌の上を滑り落ちてゆく水滴は、宝石みたいだった。

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