【コミカライズ】漆鷲社長の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―

「行く前に、少しだけ⋯⋯」

「⋯⋯んっ」


出発の前にスッと抱き寄せられて、そのまま覆い被さるように唇が塞がれる。

一緒に住むようになってから、一日に数え切れないくらい交わされるキス。

とっても濃密で、あまーくて。

永斗さんが満足するまで、なんどもなんども重なるから。

化粧をしようにも、リップは取れてしまうし

眼鏡つけていたら、毎回はずさなきゃならないし

だからどちらもつけていない。

眼鏡については、綺麗になりたいというよりも、それが一番の理由だったりもする。


「んんっ⋯⋯そ、そろそろ、行かないと⋯っ」

「しばらくできないのに⋯⋯」


たっぷり数分間キスをして。そっと胸を押して離れると、ションボリ顔の永斗さんがこっちを見ている。


ゔぅっ⋯⋯!


毎度ながら、この捨てられた子犬のような顔に、胸が撃ち抜かれる。

心がグラグラだ。

でも、これ以上してると時間も押してしまうし。

心苦しいけど。


「⋯⋯うちの両親もまってますし」


迷った末に、そう告げると


「⋯⋯そうだね、行こう。ご両親を待たせるわけにはいかない」


永斗さんは急にキリッとした表情をして、名残惜しそうに身体を離した。


ちょっと申し訳ないけど。

効果は絶大だ。

基本的に、永斗さんは周囲に迷惑をかけることを過度に嫌がる。(慣れ親しんだ人にはあまり効かない)

たぶん、『漆鷲』という名前を背負って生きてきたせいなんだろうけど、強引に推し進められそうになったときは、今みたいにやんわり盾突くことを覚えた。

なんて言ったら、たっぷりいじわるをされそうだから言わないけど。

操縦方法は覚えておいて損はない。

きっと島田さんとなら、この件についてわかり合えるはずだ。


< 442 / 489 >

この作品をシェア

pagetop