【コミカライズ】漆鷲社長の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―
会長の住む別邸までは、一本の渡り廊下で繋がっており、外に出ることなく移動することができた。
永斗さんの話しによると、彼が生まれたときに足の悪いお祖母様が気軽に行き来ができるようにと、つけられたものらしい。
そして、建屋へと足を踏み入れた途端。
周囲は、中世のイギリス貴族が出てきそうな住まいへと姿を変える。
洋館といったほうが、しっくりくる雰囲気だろうか。
厳かというか
アンティークというか
そういった言葉が当てはまるインテリアがひしめき合っている。
レジデンス内の家具も、そういったものが多いことから、永斗さんの好みは会長の影響を受けてるのかな。
そして、少し進んだ別邸の入口には島田さんが待ちうけていて、先ほどと同じく、私たちを会長のいる部屋まで先導してくれた。
「漆鷲会長、永斗さんと真島さんをお連れしました」
声をかけると同時に、真ん中にある向かい合ったクラッシックソファーから、ひとりの白い髭を生やした老紳士が立ち上がる。
漆鷲会長だ。
今の時期は使われていないレンガの暖炉と、上質な臙脂色の絨毯の上をゆっくりと横断して、彼はまっすぐこちらに歩いてきた。
「待っていたよ。こうやって会うのははじめてだね、真島さん」
永斗さんと親しげに挨拶を交わしたあと、私に穏やかな視線を携えて声をかけてくれた。
彫りが深く、整った目鼻立ち。
若い頃はさぞかし美男子だったことがわかる素敵な老紳士。
授賞式でもそうだったが、厳格と聞く割にはとても柔らかい表情だった。
「は、はじめまして! 授賞式では会長賞の方授けていただき、ありがとうございました」
「はは、今はプライベートなんだから気を使う必要はないよ。さぁ、座りなさい」
求められるがままに握手に答えると、私たちは先ほどまで会長が座っていた対面式のビンテージ物のソファーへ座るように促されて、そこに並んで座った。