【コミカライズ】漆鷲社長の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―
そして、ほどなくして香ばしいコーヒーの香りが部屋を包むころ。
会長が感心するように唸る。
「なるほど、今回の商品案はうちの郊外にある別邸で思いついたものだったのか⋯⋯」
カップを手にした会長は、納得しつつも少し驚きを隠せないような表情で白い髭をなでた。
その様子に相槌を打っていると、組んでいた手を解いた永斗さんがコーヒに口をつけたあと、私の代わりにさらに説明を連ねていく。
「彼女は仕事熱心だから、あそこに連れていけば、いいアイデアが思いつくんじゃないかと思ったんだ。
じーちゃんもしばらく行ってないだろうし、園の具合も気になったからね」
永斗さんあとに、「とてもいい勉強になりました」頭をペコリとしながら私も一言付け加える。
すると、会長はどこか遠くを見つめたまま、コーヒーを傾けると、そっとソーサーへと戻して息をつく。
「⋯⋯ばーさんとの思い出の地だから、年に数回は行きたいと思ってるんだが、なかなかな行けなくてな」
憂いを帯びた声だった。
思い出の地⋯⋯?
キョトンとしていたら、それに気づいた会長は、口元を綻ばせる。