王子様の寵愛は突然に―地味っ子眼鏡への求愛のしかた―【コミカライズ原作】
「漆鷲社長――⋯?」
返事が無いため、鏡の向こう側でこちらを眺めたまま固まる、漆鷲社長にもう一度問いかけた。
仕立の良いオフホワイトのスーツ。
海外の高級ブランドのロゴが入ったピンクと紫を基調とした花柄のネクタイ。
カフスボタンは、スーツに生えるゴールドが煌めいている。
まさに物語から出てきた王子様は、私の声にハッと視線をあげた。
「あぁ⋯⋯いきなり驚かせたね。ドレスコードついてるから、こちらで用意させてもらったんだ」
「どど、ドレスコード?!」
驚きすぎてそろそろ倒れる。
一般人の私は、普通にレストランやカフェを想像していたんだけど、
食事ってそういうところ?!
私が行ったら場違いになるんじゃ⋯⋯
かといって⋯⋯
漆鷲社長がチェーン店に入るのも、想像できないし。
いや、まずい。
毎日オーダーメイドの高級スーツをビシッと着ている彼が、牛丼やハンバーガーをなんて食べていた日には、眼鏡の度数を疑うに違いない。