介護士は恋をした
「私もずっと入所者の人との関わり方は勉強してるんだ。お互い、一緒に頑張ろうよ」

「はい」

その日から、湊は咲良によく介助の方法などを聞くことが多くなった。教科書にはないことが現場ではたくさんある。そのひとつひとつを咲良と乗り越えていくたびに、湊は咲良をどんどん好きになっていくのだ。

そして、季節は夏になる。



オムツ交換をしたり、入浴会場をしているうちに入所者の人のお昼ご飯の時間となった。お昼を配って食事介助をした後、湊もようやくお昼休憩がある。

「午後からはみんなで書道するから楽しみ!」

咲良がそう言い、「書道、苦手ですけど頑張ります」と湊は言った。書道は小学生の頃から苦手なのだ。

そしてお昼休憩が終わった後、数人の入所者さんたちと湊と咲良で書道をすることになった。テーブルの上に墨汁や筆、そして紙を並べて好きな字を書いていく。

「咲良ちゃん、書道上手ね〜」

湊が目の前に座る咲良の手元を見れば、バランスの整った美しい「華」の漢字が書かれている。
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