介護士は恋をした
「すごい!書道習ってたんですか?」

湊が訊ねると、咲良は「小学生の間だけだけどね」言い紙をまた用意して今度は「林檎」と書く。その美しい字に湊はもちろん、入所者の人は感動して口々に褒めていた。

「それに比べて湊くんはね〜……」

「下手くそだな!」

入所者の人に言われ、湊は恥ずかしさで俯く。自分が書いた「雷」の字は誰がどう見ても上手とは言えない。バランスがうまく取れていないのだ。

「確かにこれはひどいね」

咲良がそう言い、立ち上がる。好きな人にそんなことを言われてショックを湊は受けていたが、それは次の瞬間にはかき消されていた。

「筆を握ってる手に力を入れすぎ。もう少し力抜いて」

筆を握る湊の手の上から咲良がそっと握る。湊は何が起こったかわからず、「へっ!?」と驚いてしまった。咲良はそれに気付いていないのか、湊の手を動かしていく。

「おお、上手になった!」

「さすが咲良ちゃん!」
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