結婚から始めましょう。
「私は、蓮さんのことをほとんど知りません。逆に蓮さんも私のことをそこまでご存知ではないですよね?」

「まあ、そうですね。桃香さんの仕事のことと、それに向かう姿勢、あの日見かけた姿といったところでしょうか」

あの日見かけた姿?
なんとなくそう付け加えられたことが気になったけれど、話を続けた。

「私も、蓮さんがカサブランカの社長でいらっしゃることと、ホームページに載せられていたプロフィール程度しか知りません」

蓮は頷きながら、私の話を慎重な様子で聞いている。

「本当は、お断りするつもりで来たんです。というより、事前に華子さんにお断りするようにお願いしていたんです」

蓮の表情がわずかに硬くなるのを感じた。けれど、気付かないふりをして続ける。

「でも、会うだけでもと言われて、今日を迎えたんです」

私が何を話そうとしているのか掴めないのだろう。テーブルの上に置かれた彼の手に、ぐっと力がこもった。

「私の仕事で言えば、お付き合いを始める時って、お互いの条件から入るんです。その上で、この人とならってパートナーを見つけます。ある意味、消去法なんでしょうね。
私は正直なところ、恋愛をしたことがありません。だから、この消去法のようなやり方しかわからないんです」

再びコーヒーに口をつけて、気持ちを落ち着かせる。
蓮は言葉を発することなく、私の話を待っている。

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