結婚から始めましょう。
「お疲れさまです」

定時を少し過ぎた頃、未来アートを出て、真人の指定したカフェに向かった。



コーヒーを注文して一息つくと、やっと周りを見回すゆとりが出てくる。
駅から近いこの場所は、窓越しにたくさんの人が行き来しているのが見える。その何処かに真人がいるのかもとわずかに緊張が高まったものの、かなり早目に来ているからまだいないはずと、なんとか肩の力を抜いた。

今日は一体どんな話をされるのか……
待ち合わせの時間が近付くにつれて余裕なんてなくなって、どんどん不安な気持ちが強くなってくる。



「ちゃんと来たな」

頭上から降ってきた声にハッとして顔を上げると、意味ありげな笑みを浮かべた真人がいた。彼は遠慮なく向かいの席に座ると、やってきたウエイターに自分の分のコーヒーをオーダーした。

「相当悩んだって顔してるな」

くくくっと笑いながら言われて、苛立つ自分がいる。けれど、ここはなんとしても冷静に対応したくて、テーブルの下でぐっと手を握った。

「あんな意味深な言い方をされれば、どうしたって考えてしまいます」

「まあ、そうだろうな」



真人が、運ばれてきたコーヒーを一口すするのを待って、私から口を開いた。


「それで、どういうことですか?私達の結婚に、何か問題があったとでも言うんですか?」

「まあ、そんなに焦るな。時間はあるんだ。ちゃんと話してやるよ」

時間はあるんだって、私はここに長居する気はない。



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