結婚から始めましょう。
「そうとは知らず、蓮なりに焦ったんだろうな。そんな相手もいなかったみたいだしな」

正面から睨むように見られてゾッとする。
何か良くないことを言われる気がしてならない。握りしめていた手が、次第に汗ばんでくる。

「偶然、営業まがいのことをしているあんたを見かけた。外見ぐらい好みだったのかもしれないな。とにかく、あんたのことを調べたら、会長とのつながりが見つかった。幸運なやつだな。
まるで運命であるかのような出会いを装って、結婚まで持ち込んだ。経験のなさそうなあんたのことだ。落とすのなんて簡単そうだしな。
結婚相手が会長の親友の娘。なんて爺さん孝行なんだろうな。会長さえ取り込んでしまえば、自分の立場は守られるしな」

思わず息をヒュッと飲み込んだ。真人の語る私と蓮の出会いは、表面上、間違ってない。

「言葉もないって感じだな。仕組まれた結婚ってことだ。まあ、出会いはどうであれ、今は上手くやってるようだがな。それだって、蓮の本心とは限らない」

「蓮さんの……本心……?」

掠れた声に、自分がどれほど動揺しているのかがわかってしまう。

「ああ」

真人は組んでいた足を解くと、前屈みになって私の耳元に顔を近付けた。
思わず身を引くと、ニヤリとして言った。

「男は、好きでもない女でも抱けるんだよ。だってそうだろ?政略結婚ってものは、そういうものだ」




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