結婚から始めましょう。
真人と別れて駅に向かった。ここにはこんなにもたくさんの人がいて、こんなにも音や色や匂いが溢れているというのに、何も感じられない。


〝男は好きでもない女でも抱けるんだよ〟


そういう人がいるってことはわかっている。
蓮もそうだと言いたいのだろうか?
仲の良い両親が理想の夫婦だと言った彼も……


〝惨めな結婚だな。さっさと別れたら?あいつならそれなりの手切金をくれるんじゃないか?〟


別れ際に真人がの放った言葉が、ますます私を苦しめた。

真人の話は、正直理解が追いつかない。
とにかく、会長とその子や孫の代で対立が起こっていることはわかった。その原因は、蓮達親子。

親子を排除しようとする真人達と、守ろうとする会長の間の対立は、あの話ぶりからすると、相当なものなのだろう。

私と蓮が別れることで、会長との約束を反故にさせたいのだろうか。
でも、蓮が身分とか地位とか、そんなものに執着しているとは到底思えない。むしろ、昇進は会長の期待に応えたい為であって、自ら希望したようには見えなかった。

真人の一方的な言い分を鵜呑みにするわけにはいかない。

そうわかってはいる。




けれど、真人が放った心ない言葉と向けられた悪意は、私を追い詰めるには十分すぎた。













< 98 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop