触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
ここに来たときと同じ服を着て、玄関でブーツを履く。

先に靴を履いて待っていた澪ちゃんの胸には、羨ましいとさえ感じたあの膨らみがない。
もう隠すつもりはないようだ。

狭い玄関で立ち上がったとき、澪ちゃんにぶつかりそうになって思わず体を後ろに逸らす。



「なんで逃げるの!」

「……ごめん、なんでだろう」



自分でもよくわからない。
ちゃんと目で見て、頭では納得しているはずなのに。



ふぅ、と澪ちゃんがため息をついた。



「遅刻したら大変だから、行こう」



手を差し伸べられる。

嫌な感覚がしたらどうしよう。
今までの人達と同じように、拒否してしまったらどうしよう。

怖くて触れない。



「大丈夫だから」


手をつかんで抱き寄せられる。
ぶつかった平らな胸から聞こえる鼓動が、私よりも早い。


「昨日それ以上のことしたでしょ?」


確認するように見下ろされる。

ーーあ、目が合った。


「……澪ちゃん、心臓の音すごいね」

「俺も結構いっぱいいっぱいなんですよ」



一人称が変わっていることに気づく。
はっとして顔を上げたら、澪ちゃんが愛おしいものを見るような目で見ていた。

少し見とれて、それから触れるだけのキスをした。
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