触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
澪ちゃんが開けてくれた車の助手席に乗り込んで、家と職場までのナビをしながら他愛もない話をする。

少し前までお互い緊張していたのに、今はもう慣れていつもみたいに話ができるようになった。



「ミカさん、水曜日また泊まってって? 俺休みだし迎えに行くから」

「いいの?」

「うん」

「じゃあ、私ミカちゃんの学校の学食行ってみたい! おいしいんでしょ?」



前に聞いたときから気になっていた。
澪ちゃんの通っている大学も、大学生をしている澪ちゃんも一度見てみたかった。



「おー、行きますか? ミカさん普通に学生で通用すると思う」

「やった、楽しみだねぇ」

「あー可愛い、なにこの人ー。ミカさん今日仕事休んで俺といてよー」


赤信号で止まる車のハンドルにしがみつく。

ーーヒモみたいなこと言うな。

男だということを隠す必要が無くなって気が緩んでいるのかそれともこれが素なのか、それまでの大人びたお姉さんな澪ちゃんが、ただの甘えんぼうな年下彼氏になった。

女の子だと可愛いと思える言動も、男の人が使うとただのダメ人間に聞こえる。



< 174 / 259 >

この作品をシェア

pagetop