触らないでよ!〜彼氏に振られたその日、女の子(?)に告白されました〜
飲み慣れないワインを飲んで、頭がぐらぐらする。

タクシーを呼ぼうとしたサラサさんを、風に当たりたいからと断って店を出た。


あと1ヵ月もすればクリスマスなんだな、とショッピングモールの装飾を見て気づく。


今までタイミングが悪くて、誕生日もクリスマスも年末年始も、付き合った人と過ごした記憶がない。


クリスマスまでには澪ちゃんの忙しさも落ち着くから、一緒に過ごせたらいいな……。




そんなことを考えていたらますます触りたくなった。

今から行ったら迷惑だろうか。
時計を見ると21時を少し過ぎたところだった。


足は駅に向かって早くなって、指は勝手に通話ボタンを押していた。







呼び出し音が長い。
電話も出られないくらい忙しいのかもしれない。



切ろうとしたら通話時間を示すカウントが始まった。



「もしもし」


『ねー、澪の電話鳴ってるー』



向こうから聞こえたのは、澪ちゃんでもなんでもない、女の人の声だった。

慌てて通話を切る。








心臓の音がうるさいのは、駅まで急いだからじゃない。


ーー誰、今の……。


聞いたことのない声が澪ちゃんを呼び捨てにしていた。

この時間、これだけの情報があれば、誰だって簡単に動揺する。
私だけじゃない。

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